Yuma I.
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唐津の海と器と人に抱かれる、静かな贅沢
渚館きむら 唐津茶屋での滞在は、心ほどける物語のようでした。
明治27年創業、131年の歴史を持つこの宿は、大人の隠れ家であり、家族や親族の憩いの場であり、商談にも選ばれる唐津の名宿。ここでしか体験できない「海・食・器・人」が絶妙に調和し、唐津という町そのものを味わう旅になりました。
■ 旅の始まりは、優しい“おかえりなさい”
到着してまず感じたのは、スタッフの笑顔が持つ温もり。
柔らかな挨拶とともに唐津の話を少し交わすだけで、不思議と安心感が湧いてきます。チェックインの手続きも軽やかで、ここから始まる滞在への期待を自然と高めてくれました。
■ 部屋に広がる、海と歴史の風景
畳の香りに包まれた和モダンの部屋。
窓の外には唐津湾の青が広がり、東には唐津城、城下には早稲田佐賀中高が見えました。スタッフが「夕暮れの唐津城は格別ですよ」と一言添えるその表情がまた、旅を彩ります。
■ 湯と海がひとつになる時間
お風呂はまさに、“海と同化する”感覚。
開け放たれた窓から波音と潮風が届き、無色透明の湯が心地よく肌にしみわたる。夜の静けさと、朝の光に輝く唐津湾――時間帯ごとに違う表情で癒しをくれる贅沢な空間です。
■ 部屋食で味わう、佐賀の真髄
夕食は部屋で、20年の経験を持つスタッフの軽快なトークとともに届けられます。
呼子のヤリイカの活き造りは、まるで光を纏った彫刻のよう。透き通った身の甘みと歯ごたえは、東京ではまず出会えない鮮度。天ぷらにすれば衣の香ばしさと出汁の旨味が調和し、また違った表情を見せます。(イカは時期により産地が異なる可能性あり)
佐賀牛ステーキは、香港のミシュラン三つ星「Caprice」でも絶賛された逸品。レアでとろける旨味に、塩と地元の山葵が寄り添います。(部位は予約時にご相談ください)じゃこ炊き込みご飯、唐津産野菜の小鉢、唐津焼・伊万里焼・有田焼の器たちが、佐賀・長崎の焼き物文化を静かに語りかけてくれました。
合わせる地酒も格別。万齢、鍋島、七田――それぞれが料理と見事に寄り添い、食の旅に深みを与えてくれます。
■ 翌朝の海辺と器と茶の記憶
朝は砂浜でストレッチをして、松林を抜けてヨットハーバーへ。
潮風の中を散策しながら、唐津の自然と静けさに心が整っていく。再び朝風呂で海を眺めながら、旅のクライマックスを迎えます。
朝食は掘り炬燵の個室で。名物の鯛茶漬けは、出汁と鯛の旨味がご飯にしっとりと絡み、唐津茶のまろやかさが優しく締めくくってくれます。器の美しさも、朝の光に照らされてより一層引き立ちます。
秋の唐津くんち、四季の食材を求めてまた訪れたい場所、唐津になりました。
余談ですが、受験前に、唐津の空気を吸いに来ませんか?早稲田佐賀中高の受験を控えるご家族にも、この宿はおすすめです。
受験直前の数日をここで過ごせば、唐津の空気、文化、食に触れられ、少しだけ「地元」の感覚が芽生えるはず。静かな海辺で心を整え、唐津焼の器で朝食をいただき、歴史ある街を散策する――そんな体験が、きっと本番の力にもなるはずです。